こころの相談室コラム
原因と結果、偶然について

こころに何か悩みやトラブルを抱えたとき、私たちは「なぜだろう?」「何が原因だろう?」と考える癖があります。
「会社に行くのが辛いのはどうしてだろう?」「子どもが学校に行けなくなった理由は何だろう?」「部署の雰囲気が悪いのは私のせいなのかな?」・・・などと考えてしまいます。
また、誰かが悩んでいる場合でも同じです。
「どうしてあなたの今期の業績はこんなに悪いのか?原因を考えてみなさい」「どうしてそんなにやる気がないの?」と、
ついつい理由や原因をたずねてしまいがちです。

科学の知が力をもっている現代の社会では、何事にも「エビデンス(根拠)」に基づくことが求められるため、
問題が起こったときにその原因を探るのはある意味当然のことと言えるでしょう。
言うまでもなく、原因を明らかにして結果を捉え直すことは、多くの場面で有効に働く考え方です。

しかし、こころの問題が解決するときは、意外にも「偶然」の力が働いていることが多いのです。
これは調査研究の結果としても示されているのですが、「たまたまいい出会いがあったから」「偶然、昔の日記が出てきて思い出したことが・・・」
など、内容はそれぞれですが、偶然が作用することはとても多くあるようです。

もちろん、問題の原因が解消したり、改善したりすることも大切なことです。
しかし、置かれている状況が変わることで、問題の捉え方、見え方が変わることもよくあります。
ある企業の役員の方にも「会議で煮詰まった企画も、偶然の流れでうまくいくことが多い」という話を聞いたことがあるのですが、
私たちの生活の中には、「原因と結果」という考え方ではきれいに説明できないようなことがたくさんあるように思います。

悩みがあるとき、トラブルのただ中にある時には、原因を追及したくなる気持ちが強くなる傾向があります。
そんなときは、少し視点を変えてみること、考え方をふわっとさせてみることも大切かもしれません。

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